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IT企業での営業の仕事とは 〜IT企業の現役営業がご紹介します~

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IT企業での営業の仕事とは 〜IT企業の現役営業がご紹介します~

企業研究

IT業界を目指す就活生は多いと思います。筆者のIT企業での経験をもとにIT企業に就職した後、どんな仕事をするのかを紹介してみたいと思います。

IT企業と言っても色々な区分けがあります。提供しているサービスや製品での区分けでは、ハードウェア系、ソフトウェア系、クラウド系、ネットワーク系、XaaS(クラウドでのサービス提供)系、SI(システムインテグレーション)系、IT人材提供系など多様な業態に別れます。また、外資系か日本企業かでも企業の特色が違ってきます。

このようにIT企業は多種多様で、仕事内容も企業ごとに異なってきます。そのため、今回は筆者の勤務している日本のIT企業の営業 (金融業界担当)の仕事内容についてお話ししていきたいと思います。


目次

外向けの仕事

1.顧客の調査

2.社内での商材の調査

3.提案活動

4.受注/契約締結

5.プロジェクト開始/プロジェクト期間中

6.プロジェクト完了/カットオーバー(システム稼働)

7.システム稼働中

内向きの仕事

1.社内報告業務

2. 事務作業

3.ミーティング

4.組織横断活動

まとめ


外向けの仕事

仕事内容は大きく分けて外向きと内向きの2種類があります(これはどこの会社も同じだと思いますが)。

外向きの仕事とは、注文を取るために顧客へ働きかける仕事です。営業の仕事ですぐに思いつくのがこの外向けの仕事かなと思います。

では、外向けの仕事はどんなことをやるのかを少しブレークダウンしてみます。

1.顧客の調査

顧客が何を目指しているのか、どんな課題を持っているのかを知ることが第一歩となります。Webサイトの企業情報や経営に関する公開情報を確認することは当然ですが、新聞や雑誌などの情報も日々収集しています。

こうした公開情報だけでは実際に顧客が具体的にどのような計画を立てようとしているかまでは見えてこないので、顧客に実際に会って話を聞きに行きます。

「公開情報にはこんなことが書かれていました。そこから考えるとこんな課題がありと思われ、解決するためにこんな提案ができそうですが、お話しを聞かせていただけないですか」という感じでのアプローチです(こんなにキレイにストーリーが作れることはほとんどないですが)。

ただ、ここで顧客の話を聞くと言ってもそんなに簡単な話ではありません。そもそも話を聞きに行く先があるのか(話を聞きたい部署の人を知っているのか)、話をしてくれるだけの関係がなければ話を聞きに行くことすらできません。

また、顧客も忙しく、時間に追われています。そのため、一度は面談をしてくれるかもしれませんが、自分自身にメリットがないと思われてしまうと、二回目からは面談を申し入れても会ってくれないということになります。

そのため、顧客との面談では相手に役立つモノ (情報提供など)を心がける必要があり、相手の興味関心を把握しておくことが大切です。

余談になりますが、人事部から異動してきた先輩営業がいました。とても人事制度に詳しく、客先には行った際に年金制度の話など顧客の個人的な人事のお困りごとの相談にのって顧客からとても重宝されていました。

IT営業ではあるのですが、人事のネタで顧客に入り込んだわけで、どのように顧客にメリット感を出すかは人それぞれとだと思います(この先輩は、もちろんITの商談はきちんとされていましたので念のため)。自分自身の得意技を持つことが大事であることを教えてもらったエピソードです。

2.社内での商材の調査

自分の会社でどんな商材を扱っているかなんてわかっているよ!と言う方がいらっしゃると思います。でも、知らないこともかなりあるのが現実です。

IT業界の特徴かもしれませんが、とにかく新しい技術や製品・サービスがどんどん出てきます。

加えて、これまでの製品・サービスでもバージョンアップがあり、新機能が追加されたとか機能が統合されたなどということが日常茶飯事です(しかもアルファベットでの略称・・)。

顧客の課題を解決するために提案を行うのが営業の仕事なので、こうした自社の製品・サービスの内容についてキャッチアップするための勉強も大事な仕事になってきます。

また、ビジネスには競争相手(競合)が必ずいるので、競争に勝つためには競合の製品・サービスもある程度押さえておく必要も出てきます。

製品・サービスの担当部門に依頼をして勉強会を開催するなどがよく行われています。

ただ、この勉強は日々の仕事に追われると後回しにしやすい仕事のNo.1でもあり、なかなか時間をとれず(とらず)、顧客から「この製品、紹介してよ!」との依頼で初めて名前を聞き、「すぐ確認します!」というやりとりになってしまうことも多々あるのが実態でもあります。

地味ですが、勉強し知識の積み重ねができるかどうかは後々大きな力の差になってくるとことかと思います。

ITは一般的には技術的にわかりづらく、用語のアルファベット略称が多く使われるので、興味が持てないと後々辛いかもしれません。

3.提案活動

顧客の課題やお困りごとがわかってくると、その解決のための提案を作成することになります。

提案にも大きく分けて2パターンがあります。

随意契約(競合他社の参加がなく自社のみで契約するパターン)と提案依頼書が顧客から発出され競合がいるパターンです。

営業として注文を取るため、競合がない随意契約に持ち込もうと活動します。ただ、顧客内でもベンダー(販売業者)を選定する上での手続きがありベンダー同士の比較は手続きの際の必要項目になっていることがほとんどで複数社に提案依頼書が発出されることが多くなっています。

そのため、営業活動の中で他社にはない自社の特徴をロックアウトフィーチャー(他社を排除するための特徴)として顧客に気に入ってもらい、提案依頼書に記載してもらうように活動を行います。

提案するかしないかは、自社で持つ製品・サービスで顧客の課題を解決することができるか、ビジネスになるか(お金になるか)、リスクはないか、という観点で判断していきます。

自社の製品・サービスで顧客にメリットを出せなければそもそも参加資格がりませんし、提案したところで採用もされません。

ビジネスは慈善事業ではなく営利目的の活動なので、目指す収益が確保できるかどうかという観点で提案機会を評価しています。提案機会はあるけれども、競合が強く受注確率が極めて低い場合などは、提案を辞退することもあり得ます。

また、収益にも関係しますが、製品・サービスを提供しITシステムを構築する過程や構築後にリスクを背負うことにはならないかということも判断材料になります。リスクとは収益悪化のことで、例えばシステム構築中に顧客要望が頻繁に変更となり、何度も作り直すことにならないか、また、その費用負担は背負わされていないか、などです。

こうした判断を経て、提案するということになると多くの場合は社内で提案チームを組成します(提案機会の発生から組成していることが多いですが)。

システムエンジニア(SE)、製品・サービス部門、営業でそれぞれ役割分担をして作成していきます。

SEは技術的にどのように構築するかの実現手段の検討とシステム開発などの構築費用の見積もりを受け持ちます。

製品・サービス部門は、SEに提案対象の製品の技術情報を提供します。

また、場合によっては製品・サービスの改造検討を行います(改造には費用がかかる場合があり、その費用も見積ります)。

営業は、顧客へのアピール(顧客の課題がなぜこの提案で解決できるか、この提案のどこが良いのか、自社のポイントはなにか等々)の記載と見積り金額の取りまとめを行います。

製品・サービス部門からの見積もり、SEの構築費用見積もりなど必要な費用を漏れなく取りまとめる必要があります。

弊社の場合、営業が利益に対する責任部門なので集計した費用に対して、必要な(規定された)利益を乗せて顧客への提示金額を作成します。

やっと顧客へ提案を出せると思われると思いますが、実はまだ顧客への提示はできません。

金額にもよりますが、社内での提案審査という手続きが待っていてそこでの承認を経てやっと客先提示ができることになります。この過程は、提示金額が適正か(抜け漏れがないか)、リスクは潜んでいないか、スケジュールや実現方法は妥当性があるか、などを審査します。

社内審査が終わるといよいよ顧客に提案書を提出します。通常は提出後に説明会があり、提案内容の説明や質疑応答の場が設けられます。営業、SEで出席し、場合によっては会社としての意気込みを示すためとして役員も出席する場合もあります。

提出後、顧客は競合他社の提案書も含めて選定作業を行います。

営業はこの顧客の選定作業がどんな状況で進んでいるのかの情報を収集していきます。

自社の技術的な評価はどうなのか、価格は他社に勝てているのか、誰が選定のキーマンになっているのか、購入の意思決定者が重きを置く評価ポイントはなにか、など勝ち抜くために情報収集を行います。

価格で負けているのであれば値下げをしたり、技術面で劣っているようであれば補完するような再提案を行うなどの対策を講じていきます。

ここでも、どこから(誰から)情報を入手するかがとても重要になってきます。そのため、選定作業で重要なポジションにいるキーマンとは日頃から良い関係を築き、情報を入手できるようにしておくことが大事になってきます。

このような水面化の活動も含めて商談を獲得していきます。ちなみに、商談において2位以下は受注できないので、仕事を獲得するためには1位のポジションを獲得する必要があるのでシビアです。

4.受注/契約締結

提案活動を勝ち抜き、商談を獲得できる立場になっても営業としては喜んでばかりはいられません。受注=契約締結が必要となるので、営業は契約条件を社内、顧客と調整し、契約書を締結してようやく正式な受注となります。

システム構築の契約には、注意しておくべきポイントがいくつかあるので法務部門などに入ってもらい交渉、調整していきます。

5.プロジェクト開始/プロジェクト期間中

プロジェクトが始まるとシステム構築の主役はSEとなります。営業としては一息つきたいところですが、そういうわけにもいかないのがIT営業です。

システム構築では、どんなシステム作るか、どう作るかを取り決めた仕様書に基づき作業を進めていきます。

すべてがこの仕様通りうまく行けばいいのですが、仕様書の内容が間違っていたり、業務に照らし合わせると変更しなければならなかったり、自社の作業が遅れてしまったり、間違ったことをやってしまったりということが発生します。

こうした日々発生する大小含めた事件をプロジェクト成功のために調整していくこともIT営業の仕事となってきます。仕様書の間違いが顧客の責任であれば追加で発生する修正作業の追加費用を顧客に請求交渉したり、スケジュール遅延が発生しそうであれば社内に要員増の調整を行ったりをしていきます。

そのため、プロジェクトが開始されてもプロジェクトの状況を常によく見て把握しておく必要があり、状況に応じて適切な対応を行っていくことが求められます。

6.プロジェクト完了/カットオーバー(システム稼働)

受注したプロジェクトが完了し、カットオーバー(システム稼働)すると営業として一旦肩の荷を下ろすことができます。

ただし、システムのカットオーバーの直後はトラブルが多いため、臨戦体制で臨むことが多く気の抜けないタイミングでもありますが。

7.システム稼働中

一度稼働してもメンテナンスしていく必要があるのがシステムの特性です。

新たな業務が追加されたり、業務内容が変更になったりするためです。そのため多くの場合、メンテナンス契約を結びますので、その契約調整、締結を営業は行っていきます。

また、稼働中のシステムに大きなトラブルが発生した場合、SEだけではなく営業も出動してSEと共に対応を行う必要があります。SEが復旧に向けシステム作業に専念できるように、顧客や社内への報告、追加応援が必要な場合にはその要請などの役割を担います。

筆者の場合、客先に徹夜で3日間ほど対応に追われた経験があります。正直、したくはない経験ですが、うまく対処できると顧客との距離感を縮める経験となるので、悪い経験ではないと言えると思います(考え方次第ですが・・)。

内向きの仕事

1.社内報告業務

報告業務は大別すると活動報告と予算報告があり、それぞれ説明します(会社によって違うかもしれませんが)

・活動報告:日報や週報といったどのような活動を行ったか、次に何を行おうと予定しているかを上司に報告する業務です。

会社によってはやり方は異なると思いますが、最近はチャットを活用するなど簡易でできるような工夫をしている企業もあるようです。ちなみに筆者が若手の頃は手書きで、日報と交通費精算の合体した報告書で日報を書かないと精算できないため必死で書いていました (面倒でしたが)。

・予算報告:受注、売上等の数字の見込みの報告業務です。

自分の担当顧客からどれくらいの数字を見込んでいるかの報告を行います。どの顧客のどの案件、見込み金額、案件確度(何パーセントくらいの見込みか)、前月の報告値との差異と差異理由などを報告していきます。

数字が目標に届かない場合、目標達成に向けた計画についても報告しなければならないことがほとんどです。数字の良い時はまだ良いのですが、悪い時は気が進まないことに加え、報告することが多くなるので気が重い業務となります。

また、弊社の場合、前月差異や当月の実績の集計などあちこちの管理表やシステムを確認する必要があり、とても面倒な業務のひとつになっています(弊社のシステムが遅れているためですが)。

報告タイミングは組織や上司によって異なってきます。

筆者の所属する部門では月一回となっていますが、過去経験したのは一日二回朝、夕に報告というものがありました(「そんなにすぐに数字は変わらないよ」と思いながらやってましたが・・)。一概には言えませんが、外資系では報告タイミングが短い(少なくても週一回)傾向があるように思います。

2.事務作業

顧客からの受注は外向きの仕事といえますが、受注すると社内に対して手配を行う必要があり事務作業が発生します。

見積時に作成した製品/サービスの型番ごとに受注システムに入力していきます。型番が多かったり、面倒な手続きの製品/サービスだったりするとかなりの時間を要することがあります。

昨今、会計手続きやコンプライアンス強化の流れを受けて、型番や金額以外に会計やコンプライアンス観点での確認事項が増えたり、一括承認ではなくステップごとに上司の承認が必要になるなど事務負担は重くなっているように思います。

また、プロジェクト完了や納品が完了すると顧客から検収(納品物を検査し受領すること)をもらい、売上計上を行う業務も弊社では営業の仕事になっています。弊社では負担の重い業務のNo.1で最も不人気な業務となっています(でも必須ですが)。

企業によっては、この事務作業を専門の部門を作るなど営業部門から分離しているところもあるようです。

3.ミーティング

筆者の所属する部門ではいくつかのミーティングがセットされています。

・週次全員ミーティング 30分程度 オンライン 全員参加(約100人)

毎週、連絡事項、トピックスなど伝達、共有する目的で実施しています

・四半期全員ミーティング 1.5時間程度 オンライン 全員参加

四半期ごとに組織の運営状況や方針、施策の共有やアップデートのため全員参加で実施しています。

・週次グループミーティング 1〜2時間程度(グループによる)

配下の各グループ単位で実施するミーティングです。各自の仕事の状況を共有したり、上司からアドバイスや指示をもらったりします。

また、必要な連絡なども行います。

グループによっては週2〜3回開催していて、対面やオンラインを交えてながら実施しています。

・1on1ミーティング 0.5〜1時間程度 オンライン/対面

いわゆる個人面談です。

自分のキャリア上の希望や相談事など業務以外の事柄も話をする場として設定しています。

個人のやる気(モチベーション)が業務上の成果に与える影響が大きいということで近年重視されてきているミーティングです。

筆者の組織では月に1度設定されています。

個人業績の評価や目標設定もこのミーティングで行われています。

・各種勉強会 不定期

製品/サービスや技術動向などIT営業として知っておくべき知識を習得するために開催されます。

4.組織横断活動

組織間の情報連携やコミュニケーションをよくしていくことや組織横断することで生産性の向上を目指す取り組みを行っています。希望者や指名を受けた人はこの活動に参加しています。様々な活動がありますが例をしては以下のようなものがあります。

・全社のカルチャー創造活動

各部門から代表者が選出され、会社の文化をどう変えていけばよいか、そのためには何をしたら良いかを検討して実行するタスクフォースです。弊社の場合、任期は1年間で月に2回程度で活動しているようです。

・各部門のカルチャー創造活動

全社の配下の部門においても同様の活動が行われています。部門ごとの事情にあわて検討内容は異なりますが、任期、活動内容はほぼ同じです。

・組織横断の活動

所属組織ごとに実施する内容は異なりますが、筆者の所属組織では以下の活動を行っています。

-レクリエーション委員会:オフのコミュニケーションを企画実行します

-コミュニケーション委員会:所属組織のコミュニケーション促進を目的にしています。普段は話さない別グループの人をマッチングして会話の場を持つなどの活動です。

-キャリア委員:若手、女性など今後の自らのキャリアについての勉強会や懇談会を行っています。

まとめ

これまで外向き、内向きと分けてIT営業の業務についてご紹介してきました。会社や組織によってやり方は異なるところはあると思いますが、概ね同じような業務をおこなっているものと思います。

この記事が、就活生の皆さんに実際に企業でのIT営業の仕事のイメージを持ってもらえるものになっていればば嬉しい限りです。


執筆:就活塾 キャリアアカデミー 講師 佐藤
IT企業の営業部門に勤務。長年に渡り製造業、金融機関向けのIT
営業に従事(在職中)。
国家資格キャリアコンサルタント